GUIDE INTERVIEW
美深町
river trip CAMEL 北海道知事認定アウトドアガイド
辻󠄀亮多(つじりょうた)さん
[徳島県→美深町]

伸び代いっぱいの道北エリアで
自分と向き合う時間を見つけて

 稚内市と旭川市のほぼ中間にある道北のまち・美深町。悠々と流れる天塩川は、上流部に天塩岳自然公園、下流部に利尻礼文サロベツ国立公園が広がり、かつて川に生息していたという古代魚・チョウザメが町の名物となっています。この町でカヌーガイドを務める辻亮多さんは徳島県出身。幼いころから外遊びに親しんできた辻さんにとって、アウトドアガイドはまさに天職といえるようです。

Profile

辻 亮多さん Ryota Tsuji
1983年徳島県生まれ。北海道教育大学旭川校卒業。卒業後は道内でアウトドアガイドとして働き、2014年にriver trip CAMELを設立。サポート&キッチンスタッフをこなす妻の由希さんや、5歳の娘、1歳の息子とともにガイドに出ることもある。「365日ガイド」を自称し、仕事と生活が密着。
  • 街から原生林の森へとカヌーで川下り
    懐深い天塩川は恵まれたフィールド

    大きなカヌーを軽々と担いで「ちょっと川に浮かべてみましょうか」。アウトドアガイドらしく日焼けした笑顔から、自然の中で遊ぶのが大好きという気持ちが伝わってくるようです。美深に拠点を構えた理由を尋ねると、辻さんは冗談めかして答えてくれました。「最終的にはノリですね。観光地ではないので、仲間には『大丈夫か』と心配されましたけど」。
      釧路や南富良野でアウトドアガイドとして経験を積み、独立を決めた当初は、集客率を考えて観光客が多く、かつ川下りができる場所を吟味していたそうですが…。「天塩川は海へと注ぐ長い川。上流には名寄や士別といった街があり、北上して下流へ向かうに従って原野に分け入っていくのが魅力的だな、と思いました。だからこそ、ほんの少し乗ってみるだけではなく、この地ならではの『暮らすような旅』ができる半日以上のカヌートリップや、お客さんのやりたいことを実現するオーダーツアーに対応しています」。

  • 幼いころから自然との遊びは生活の一部
    寒さとパウダースノーを求めて北海道へ

    徳島出身の辻さんが育ったのは、海・山・川に囲まれた自然いっぱいの田舎。祖父と一緒に行く釣りや川遊び、磯潜りといった外遊びは日常生活の一部でした。冬は家族で出かけるスキー旅行が楽しみで仕方がなかったそうです。やがて地元で競技スキーを始め、高校卒業後は北海道の大学へ進学。「冬には雪が降り、季節をしっかり感じられる寒いところへ行きたかったんです」。

    大学では地域教育の一環として、地元の子どもたちを率いて自然体験学習を催行。その中でカヌーに親しむようになり、卒業後は釧路で7シーズン、南富良野で冬の5シーズンをアウトドアガイドとして勤め上げたのち、2014年に独立を果たしました。

  • 冬の寒さも雪も「邪魔者」じゃない
    パウダースノーの上で遊ぶスノートイ

    春から秋はもっぱらカヌーと過ごす毎日。一転、雪が積もると、真っ白になった森の中でのピクニックやスノーシューツアーのほか、「スノートイ」と呼ばれる板を使った遊びで、寒さ厳しい美深の冬の楽しみ方を伝えています。

    スノートイは長野生まれの「雪板(ゆきいた)」の仲間。雪板が一枚板であるのに対し、こちらは合板を使います。短いサーフボードのような形状で、足を固定する金具を取り付けず、上に乗って緩やかな斜面を滑る遊びです。

    「冬場はマイナス30℃もの酷寒と豪雪の土地ですから、毎日のようにしんしんと降る極上のパウダースノーが、町のどこにでも低温で保存されている状態。これをうまく使わない手はないですよね」。

    全体の形や滑り止めの貼り方、色付けなどに個性が出る。クリスマスには娘に1枚作ってあげた辻さん。「そんな贈り物文化も根付いたら」
  • 世代を問わずカスタマイズも楽しい
    自分で作る「Myスノートイ」のススメ

    自身はバックカントリースキーを好むという辻さんですが、美深周辺の山々は標高が低く緩やかなため、スキーではやや物足りない。一方、ちょっとした斜面があればどこでも使えるスノートイは「この土地に合っている」と言い、小さな子どもからお年寄りまで誰でも気軽に遊べるところも魅力の一つです。

    辻さんが催行する「雪板クラフト&プレイ」は、スノートイを製作するところから始まります。自作の1枚だから、愛着もひとしお。実際に滑ってみて、より使いやすいように形やエッジをカスタマイズできるのもこの遊びの醍醐味です。「カッコよくなくていいし、真剣に滑らなくていい。立って乗るソリだと思って」。ふわふわの雪が積もっているので、転んでも痛くありません。

    (右)ふかふかの新雪を滑り降りるのがスノートイの一番の楽しみ!山はもちろん、庭先や土手といったちょっとした斜面で手軽に遊べる。持ち運びも簡単
    (左)反りを入れた合板を切り、ヤスリで削ってニスを何度か塗るなどの作業を経てスノートイが完成。river trip CAMELのプランでは、板を切るところから体験できる
  • レジャーの「手段」ではなく
    目的達成のための「道具」を通じて遊ぶ

    夏は30℃、冬はマイナス30℃以下と、年間で70℃前後の気温差がある美深町。その中には、実にドラマティックな変化があると辻さんは言います。「僕がガイドとして提案するのは、カヌーもスノートイも暮らしの『道具』として使ってほしいということ。例えばカヌーなら、レジャーのための乗り物というより移動の手段。荷物を載せて川を下り、次のところへ行くためのものと考えています。こういう『道具』を通じて、美深の四季を感じてほしい」。

    滞在期間がたった1日でも、時間の過ごし方によって、得られる対価は無限大。辻さんが案内するカヌーキャンプには女性の1人客が多く、ほとんどがリピーターに。初めて会う者同士で川を下り、食事をつくって寝るというシンプルな暮らしの中で、自分を見つめ直し、旅の経験を活力として帰っていく人も多いそうです。

    (右)カヌーキャンプでは、人工物のない、真っ暗な森でキャンプをすることも。日常ではなかなか経験することがない夜の静けさや満天の星空をじっくり堪能できる
    (左)雪上車に乗り、ピヤシリの森で真冬のピクニック。森の中にテントを張って秘密基地に。スノーシューでの散策やソリ遊びのほか、スノートイも体験できる
  • 「来てみれば何かある」道北エリアの魅力
    いつか旅人たちのあこがれの地に…

    観光地として大きな目玉となるものがないといわれる道北エリアですが、来てみて初めてそのよさがわかる土地でもあります。辻さんが、周辺のおすすめスポットを教えてくれました。「湖があって、その奥に森。朱鞠内湖はそんな北欧風の景色がすばらしいです。7月末くらいからは、白い花が咲くそば畑の風景もドライブの楽しみになると思いますよ」。

    川よし、雪よし、人もよし。そんな美深のアウトドアフィールドがよりよくなるように手助けしたいというのが、今の夢。「たくさんの人に、というより、この土地のよさを理解してくれる人、何度も訪れたいと思ってくれる人たちに来てほしい。そんな旅人を惹きつけるよう、僕らもどこまでトンガレるかが勝負ですね」。

    辻さんのもと、レジャーを超えたアウトドアライフを一度経験すれば、道北エリアの本当の魅力が見えてくるかもしれません。

    ダウンリバーフィッシングは、ラフトボートに座席を取り付けた専用ボートを使う。 釣りを日ごろから楽しんでいる中級~上級者向け
river trip CAMEL
住所
美深町東6条北1丁目-293-15
電話番号
01656-8-7037
営業時間
予約受付8時~19時半
休業日
なし
アクセス
新千歳空港からクルマで約3時間30分/旭川空港からクルマで約2時間

〈アクティビティ〉

  • 雪板クラフト&プレイ(3日間)/1月初旬~3月下旬、1人34,000円~
  • 雪上車でGO!「ピヤシリの森スノーピクニック」/12月下旬~1月初旬、大人4,200円、小学生3,300円、幼児2,500円
  • 天塩川半日カヌートリップ/6月初旬~10月中旬、1人9,000円~
  • 天塩川1dayダウンリバーフィッシング/6月初旬~7月中旬・9月上旬~11月上旬、1人24,000円~
取材スタッフこぼれ話へ